【閲覧注意】異世界診療所【あれま】

異世界診療所 著 有間たん吉

 

 日常とは当たり前の繰り返しだ。当たり前のように目を開け、当たり前のように身支度をし、当たり前のように仕事へ向かう。この当たり前に差はあれど、大多数の人間は自分自身の「当たり前」を持って生活している。アマミヤにとってもそれは同じだった。

 当たり前のように目覚まし時計で目を覚まし、当たり前のようにベッドから身を起こし、当たり前のようにカーテンを開け燦々と差し込む【西日】を体に当てる。そして昨日の間に準備されていた朝食をとると、仕事をするべく自宅と職場を繋ぐ勝手口へと向かう。

通勤時間の苦痛をよく聞いていたアマミヤは自分の職場を作るに当たって、自宅と合体したものにしようと決めていた。結果、急患を運ばれてしまうことはあっても、通勤に対する億劫さというものはない。

しかし、自宅と職場が繋がっているというが故に、身嗜みを気遣わなくなったのはアマミヤの落ち度でも有り、直せない欠点の一つだ。

慣れ親しんだ便所サンダルをつっかけ、男は自分の職場、診療所に続く扉を開けた。

 

アマミヤ!!また寝癖が酷いぞ!」

「おはよう、ジェイク。悪いが、適当に直してくれ、もしくは放っておいてくれ。マチコさんもおはよう」

「おはよう、先生。今日は患者さんも来てないからお茶でもだすっちね」

 

欠伸をかみ殺しながら、押しかけ助手となった青年、ジェイクにアマミヤは当たり前のように声をかける。今日の朝はどうやら急患はいないらしく、鼠夫人のマチコへと挨拶をしながら、アマミヤは自分の席へと腰を下ろした。

 

「さて、今日も仕事を始めるか」

 

そんな日常も、窓から覗くドラゴンのゾーンさんが飲み込んでしまったスーツケースを取り出す作業でてんやわんやになるのだが、それもまた、異世界で暮らすことになった内科医アマミヤにとっては、当たり前の日常なのだ。

 

 

 

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