1からなんとなく理解できる「クトゥルフ神話」と「クトゥルフ神話TRPG」 ~前編~

 お初にお目にかかります。
 twitterでは「りっしんべん」と名乗っている者です。
 今回、ご縁がありましてA-06民営放送様のブログに、記事を投稿させていただくことになりました。
 この場におきましては『あれまさんの友人』程度の認識で大丈夫です。
 
 
 
 さて本日、私めが取り扱う内容は「クトゥルフ神話」と「クトゥルフ神話TRPG」です。
 
 あいにくと学業を収めていたのは今や遠い昔であり、かつ歴史が大の苦手ヒューマンでありましたので、国やら思想といったテーマはとてもこの手に畳める風呂敷ではございません。
 
 A-06の方々の知識や好奇心には、いやはや頭の下がる思いであります。
 
 さてそんな御二方に並び立てる知識とはなんぞやと考えてみたのですが、最近『A-06民営放送』様のYouTubeチャンネルで配信されている「クトゥルフ神話TRPG」について、多少詳しいのでご紹介させていただこうかと思います。
 
 内容は大まかに次のとおりです。
 
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●まず、「クトゥルフ神話」とはなんぞや
●「クトゥルフ神話」の「クトゥルフ」って?
●「クトゥルフ神話」の内容について
●つまるところ「クトゥルフ神話」というのは、ひとりの作家の創作なのではないのか?
 
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●まず、「クトゥルフ神話」とはなんぞや
 
 その名の通り「神話」のひとつです。
 ……と言いましても、世間によく知られましたギリシア神話などと違い、明確に起源が遡れる神話となっています。
 
 
 事の発端は1919年。
 ちょうど現在、2019年から遡ること100年前。
 
 
 ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(Howard Phillips Lovecraft)という作家によって発表された「ダゴン」という小説が、すべての始まりとなります。
 このラヴクラフト氏の生み出した一連の作品が、現在「クトゥルフ神話」と呼ばれているものです。
 
 ラヴクラフト氏が小説の中で描き出した、この世ならざる怪物、異次元の神。
 ラヴクラフト氏自身はこれらの作品群を「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」と称しておりました。
 独自の世界観によって展開される小説は、後の世の怪奇・恐怖小説らに大きな影響を与えたとされています。
 
 しかしながら、ラヴクラフト氏は天運に恵まれず、生前はほぼ無名の作家でした。
 彼の死後、彼の生み出した怪奇なる創作世界を「神話」と呼べるほど体系化したのが、ラヴクラフトを「師匠」と慕っていたオーガスト・ダーレス(August Derleth)です。
 
 ラブクラフト氏の残していたメモ書きなどから、ダーレス氏は宇宙的恐怖の世界観を引き継いだ物語を次々と生み出しました。
 その過程で、ダーレス氏独自の解釈を含めた「宇宙的恐怖の存在する世界観」が体系化され、現在の「クトゥルフ神話」になっていきます。
 
 
 
 まぁ早い話が、
 
 【ラヴクラフト氏の一次創作+ダーレス氏の考察を含む二次創作=現在のクトゥルフ神話
 
 ですね。
 
 
 
●「クトゥルフ神話」の「クトゥルフ」って?
 
 いままでクトゥルフ神話というものに触れたことがない方は、そもそも「クトゥルフ」という単語の意味も未知でしょう。
 
 この「クトゥルフ」というのは、「Cthulhu」と便宜上、表記されております。
 
 ですがこれは本来、人間にとっては発音不可能な音として作中に登場する、邪神の名前です。
 
 小説として表記するに当たって、仮に「クトゥルフ」という音を当てているだけに過ぎず、本来であれば宇宙的存在にのみしか発音できない音だとされています。
 
 ラブクラフト氏の著書の中でも、人間には発音不可能と明言されているたったふたつの単語の、そのひとつが「Cthulhu」です。
 
 後に、これらの神話を体系化したダーレス氏により「クトゥルフ神話」と名付けられました。
 
 
 
●「クトゥルフ神話」の内容について
 
 ここまで述べてきましたように、クトゥルフ神話とはラヴクラフト氏とダーレス氏による一連の小説なのですが、この著書というのも今から追いかけようとするとそれなりに数があります。
 
 なので、大まかな要点を2つ、お伝えしていきます。
 
クトゥルフ神話とは太古の神々と不運にも接触する哀れな人間の物語である。
クトゥルフ神話には「旧支配者」「外なる神」「旧神」と呼ばれる勢力がある。
 
 以上の2つです。
 
 
クトゥルフ神話とは太古の神々と不運にも接触する哀れな人間の物語である。
 
 最初にお伝えしたように、ラヴクラフト氏の小説は「宇宙的恐怖」であり、怪奇小説にカテゴリーされるものです。
 つまるところはホラー小説なので、基本的に人間は哀れな犠牲者です。それなりに死体と狂人の山が築かれていきます。
 
 
 物語の基本的構造は、
 
 「かつてこの地上に存在した神々」が、ひょんなことから復活・あるいは来訪する
   ↓
 その場に不幸にも居合わせた人間がうっかり大変な目に遭う
   ↓
 最悪の場合死ぬ、ないしは精神に異常をきたす
 
 という感じです。 
 
 
 そもそもホラーというものは、無力に死にゆく人間の悲壮感を楽しむためのものなので、致し方ありませんね。
 
 
 
クトゥルフ神話には「旧支配者」「外なる神」「旧神」と呼ばれる勢力がある
 
 このあたりからようやっと、クトゥルフ神話TRPGにも関わるお話になってきます。
 ダーレス氏が神話を体系化するにあたって、作中の神々はいくつかのカテゴリーに分類されるようになりました。
 非常に大まかに分けると「旧支配者」「外なる神」「旧神」です。
 
 
〇「旧支配者」
 かつて数千年前、この地上を支配していたとされる神々の総称です。
 現在では様々な事情により、この地上から姿を消しておりますが、神なのでそう簡単に死んだりはしません。
 だいたいヤバめの信者がついていて、復活の儀式とかされたりします。
 
 
〇「外なる神」
 地上にまだ来訪したことのない、宇宙空間の理の中に存在する神々の総称です。
 たいていの場合、「旧支配者」とは仲が悪いです。
 基本的には「旧支配者」vs「外なる神」の構図で描かれています。
 だいたいヤバめの信者がついていて、招来の儀式とかされたりします。
 
 
〇「旧神」
 「クトゥルフ神話」世界においては数少ない、人間に優しい神々です。
 主に「旧支配者」と「外なる神」の対立を止めようと奮闘し、時に巻き込まれた人間を助けてくれたりもしています。
 しかしその優しさも神様レベルのものさしで図られているので、結果的に人間にとってはヤバい結果になったりもします。
 
 
 正確にはもっと色々あるのですが、おおよそこのあたりを抑えておけば、なんとなく流れを把握しやすくなることでしょう。
 
 
 
●つまるところ「クトゥルフ神話」というのは、ひとりの作家の創作なのではないのか?
 
 怪奇小説、というカテゴリーに収めてしまえば、全てはラヴクラフト氏による創作小説になるでしょう。
 
 ですが、1937年に亡くなったラヴクラフト氏が何を着想としながら、これらの名状しがたき恐怖の世界を描き出すに至ったのかは推測することしかできません。
 
 
 すべてはひとりの作家により生み出された虚構なのか。
 
 あるいは、ラヴクラフト自身がこれらの神々に接触し、その覚書として小説があるのか。
 
 
 『悪魔の証明』という言葉があります。
 
 「ある事実や事象が『存在しない』」ことを証明するのは非常に困難を極めるという、ものの例えです。
 
 
 ラヴクラフト氏の描いた「宇宙的恐怖」は、はたして本当に、この世に『存在しない』のか。
 
 
 これを証明する手段は、今のところありません。
 
 ならば、これを読んでいる皆様のすぐそばにも、名状しがたき神々は存在するのやもしれません。
 
 今のところ、皆様が幸運にも、それらに接触していないだけで。
 
 
 
 
 以上をもちまして「クトゥルフ神話」の解説を一旦、閉じさせていただきます。
 もし興味を持たれましたら、青空文庫などでラヴクラフト氏の小説をいくつか読むことができますので、ぜひお手に取ってみてください。
 
 
 
 追伸:このような機会を設けて下さり、改めてありがとうございます。またこの場をお借りし、あれまさん、ヤマギシ06さんに深い敬意を。そして『A-06民営放送』を楽しまれるすべての皆様に、これからも素晴らしき知識の享楽がありますことを。